2007年12月05日

レッドラインタンゴ〜必勝コンクール!

【購入理由】
 2007年,日本の吹奏楽業界で最もブレイクした曲がJ.マッキー作曲のレッドラインタンゴではないかと思う.今年の吹奏楽コンクールでは非常に多くの団体がこの曲を自由曲として取り上げた.

 流行っているのは知りながら実はこの曲を聴いたことがなかったため音源を捜していたところ,東京佼成ウィンドオーケストラ(以下,TKWO)のセッション録音でリリースされたので購入した.

 所謂“新曲お披露目”みたいなアルバムでなく,カップリングにすでによく知られている曲が選択されているところがうれしい.中でもM.キャンプハウスの“ローザのための楽章”がお気に入りの曲であり,日本のプロの楽団による高水準の演奏が聴けるのが楽しみなところ.

 また,“アリランと赤とんぼ”が収録されているのも注目である.

【レビュー】
 近年,ニューサウンズとM8スタイル,コンピレーションばかりだったTKWOとしては久々の吹奏楽オリジナル楽曲の新録音となる.

 ここのところ市音やシエナに押され,勢いのなかったTKWOだったため,演奏の質に多少不安があったものの,安定感のある堅実な演奏に古豪復活の兆しを感じさせます.

 目的のレッドラインタンゴは今回初めて聴いたわけですが,スリリングなリズムと情感たっぷりのタンゴの調べが絡み合う面白い曲ですね.この曲の見せ場であるSAXソロは緩急のつけ方が絶妙で情感たっぷりの素晴らしい演奏です.TKWOということで恐らく奏者は須川氏と思われるますが,日本のトッププレイヤーのソロでこの曲が聴けるため,これからこの曲を取り上げるアマチュア奏者へのお手本としてお勧めの録音だと思います.

 もう一つの楽しみだった“ローザのための楽章”もクオリティの高い演奏で好印象.とくに前半のスローパートのやさしい響きと流れが心地よい.私の好みではもう少し後半で歌い込んだほうがいいのだが,特に気になるレベルではない.キャンプハウスの曲はなぜかあまりよい録音に恵まれてないため,キャンプハウスファンにお勧めの一枚だと思います.

 アリランと赤とんぼは私の記憶では初録音ではないかと思います.赤とんぼのほのぼのとした雰囲気にアリランの独特の節回しが加わるこの曲,実は結構難易度の高い曲なのだが,余裕を感じさせる演奏で,日本と韓国の2つの文化の交流に思いをはせて心が温かくなる秀演です.

 うれしい誤算がセンチュリアである.正直なところ,初級バンド向けの曲で,もはや“懐メロ”化しており,今さら真面目にこの曲を録音するところなどないと思っていましたが,見事に裏切ってくれました.華々しいブラスのファンファーレと木管の軽やかな旋律.「これぞ吹奏楽だ!」と言わんばかりの爽快な名演です.

 久しぶりにアルバム一枚を通して聴ける,吹奏楽の吹奏楽らしいアルバムで今年一番のお勧めのCDです.日本の吹奏楽界を牽引してきた老舗バンドであるTKWOには今後もこういったクオリティの高い録音をコンスタントにリリースして欲しいと思います.

【聴きどころ】
・“レッドラインタンゴ”の日本トッププレイヤーによるSAXソロ
・“ローザのための楽章”のクオリティの高い演奏
・“アリランと赤とんぼ”の心が温まる演奏
・“センチュリア”の吹奏楽らしい爽快な演奏


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2005年10月30日

プロフェッショナルの集中力〜大阪市音楽団の「宇宙の音楽」

 大阪市音楽団が今年6月にスパークの”宇宙の音楽”の吹奏楽版を世界初演した際のライブ録音がCD化されました.この演奏会,大変な反響を呼び,私もCD化を心待ちにしていたものです.では,早速,レビューしていきましょう.

【アーティスト紹介】
 大阪市音楽団は言わずと知れたプロの吹奏楽団です.近年,積極的にCDをリリースしており,本サイトでも紹介した”アルプスの詩”などの演奏会のライブ録音はいずれも高い評価を受けています.

【このCDの購入理由】
・スパークの”宇宙の音楽”の吹奏楽版世界初演であり,その演奏の素晴らしさが反響を呼んでいた.
・カップリングに”ミス・サイゴン”はプロによる初の録音であり,そのアプローチが注目される.

【CDレビュー】
 まず,このCD一曲目を聴いた瞬間から”ピン”と張り詰めた緊張感が漂っており,この緊張感はこのCDの全曲に渡って感じられます.この手のライブ録音盤は,どこかで集中力が途切れる瞬間があるもので,そう言った”粗さ”もライブ録音盤の”味”の一つではありますが,このCDにはそういった箇所が一つもありません.大阪市音楽団がこの演奏会に臨んだ集中力がいかに高かったかを物語っており,そう言った演奏をCDとして手にできることを幸せに思います.

 世界初演という重責もあってか,”宇宙の音楽”ではさらに集中力が高まっていることが感じとれます.冒頭のホルンのソロは,プロでも緊張する場面ですが,見事に歌い上げ,圧巻の演奏です.このホルンのソロだけでも一聴の価値ありです.

 ”宇宙の音楽”は以前紹介したヨークシャービルディングソサイエティというブリティッシュバンドのために書かれた曲であり,したがって,今回の録音は吹奏楽編曲版ということになります.このようにブリティッシュから吹奏楽に編曲された曲は数多くありますが,ブリティッシュの原曲を聴いてしまうと,どこか不自然な部分があってガッカリすることがあります.それは,曲の持つイメージと吹奏楽のサウンドが合わないことと,ブリティッシュのテクニカルな動きを吹奏楽の楽器が構造上こなせないことに起因します.今回の”宇宙の音楽”に関しては,スパーク自身のオーケストレーションが素晴らしいこともありますが,大阪市音楽団のサウンド構築力が素晴らしく,ブリティッシュ版にはない,ダイナミクスの幅とサウンドの奥行きが加わって,この曲のテーマである”宇宙の壮大さ”がより強調されています.また,演奏テクニックも申し分なく,ブリティッシュの原曲と見劣りしない素晴らしい演奏となっています.

 ”宇宙の音楽”は20分近くあって,技術的にも難曲であるにも関わらず,終盤のコラールからエンディングまではよくコントロールされており,感動的なクライマックスを作り上げています.

 また,カップリングの”ミス・サイゴン”は各部の歌いこみが絶妙であり,そこに大阪市音楽団の豊かなサウンドが加わって,大変素晴らしい演奏に仕上がっています.この曲は吹奏楽コンクールの自由曲として大ヒットしている曲ですが,今後,このCDの演奏が”ミス・サイゴン”の良いお手本となることは間違いないでしょう.

 このCDの収録曲はどちらかというと難解な曲が多いですが,大阪市音楽団の高い集中力が聴き手をグイグイと曲に引き込んでいくため,聴き手を飽きさせません.プロフェッショナルの集中力を体感できる,吹奏楽ファン必聴の一枚です.

【このCDの聴きどころ】
・プロフェッショナルの高い集中力で演奏された圧巻の”宇宙の音楽”
・ブリティッシュ版と違い,サウンドの幅と奥行きのある吹奏楽版の”宇宙の音楽”
・コンクールのお手本としても素晴らしい”ミス・サイゴン”



宇宙の音楽<吹奏楽版世界初演ライブ>/指揮:山下一史/大阪市音楽団
posted by ぶちねこ at 15:48| Comment(2) | TrackBack(1) | 吹奏楽のお奨めCD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月28日

吹奏楽の本質〜なにわウィンズ2005

【アーティスト説明】
 なにわ《オーケストラル》ウィンズは主に関西のプロのオーケストラ奏者が集まったヴィルトーゾ・ウィンドオーケストラを,淀川工業高校吹奏楽部の名物指揮者である丸谷先生が振るという,年に1回の企画もので,今年が3年目になります.

【このCDの購入理由】
・前回,前々回の演奏も素晴らしく,最新作も迷わず購入しました.

【CDレビュー】
 まず,3年目ということもあってか,サウンドが程よくブレンドされ,雑味のない大変すっきりしたサウンドになったと思います.このサウンドが,今回の少し軽めのプログラムと非常によく合っています.

 前半の3曲(イギリス民謡組曲,ゲールフォース,フランス組曲)は,とにかく明るく軽快な演奏であり,まったくストレスなく自然に聴くことができます.「午後のひと時にお茶でも頂きながら聴く」,といったシチュエーションがよく似合う,上品で素晴らしい演奏です.

 また特筆すべき点として,イギリス民謡組曲のトランペット・ソロが秀逸で,甘く軽やかな音色がとても印象的です.

 これだけ明るく,爽やか系のサウンドが出来上がってしまっていると,後半の”吹奏楽のための神話”のようなちょっと重めの曲は,曲とサウンドがマッチしておらず,もったいない印象を受けました.

 一方,なにわウィンズのもう一つの真骨頂と言えば,アンコールのポップス演奏.オーメンズ・オブ・ラブにあるクラリネットの難しいメロディーを,こんなに正確かつ軽やかに演奏しているのを聴いたのは初めてです.彼らにしてみれば「朝メシ前」といったところでしょうか.

 吹奏楽業界はコンクールが牽引していることもあり,シンフォニック志向の濃い音楽が注目されがちです.それはそれで,吹奏楽の可能性の一つであり,私も嫌いではありませんが,重量級の音楽ばかり聴いていると,少々疲れますよね.このCDは素敵なサウンドにより吹奏楽が本来持っている明るさ,爽やかさが全面に出ており,「吹奏楽っていいなぁ」って再認識させてくれる,素晴らしいCDだと思います.

【このCDの聴きどころ!】
・吹奏楽本来の良さに気付かせてくれる,明るく爽やかなサウンド
・甘く軽やかな絶品トランペットソロ
・アンコールも完璧なポップス演奏



なにわ<オーケストラル>ウィンズ 2005(通常盤)
posted by ぶちねこ at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 吹奏楽のお奨めCD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月29日

宇宙スケールのテクニックとサウンド〜ヨークシャー・ビルディング・ソサイエティ・バンドの「宇宙の音楽」

【アーティスト紹介】
 ヨークシャー・ビルディング・ソサイエティ・バンド(以下,ヨークシャー)と言えば,ブリティッシュ・スタイルのブラスバンドで,ヨーロッパのコンテストでグランプリを数多く受賞している超有名なスーパーバンドです.ヨーロピアン・ブラスバンド選手権では前人未到の6年連続優勝を成し遂げています.

【このCDの購入理由】
 タイトル・トラックのスパーク作曲”宇宙の音楽”は,ヨークシャーが2004年のヨーロピアンバンド選手権で6年連続優勝を決めた際に自由曲として演奏し,会場を興奮に包み込んだ話題の曲です.この演奏はセッション録音になります.また,このCDには,最近,吹奏楽業界でも話題のグレーアムの名曲”ハリソンの夢”がカップリングとして収録されています.この話題の2曲をヨークシャーの演奏で聴けるというだけでも,絶対に買いだと思いました.

【CDレビュー】
 ”宇宙の音楽”は宇宙の誕生から成長,地球,未知なる宇宙の神秘を描いた大作です.冒頭の神秘的なテナーホルンのソロが非常に印象的です.その後の宇宙の成長を表すスピード感のある部分での一糸乱れね統一感はこのバンドの真骨頂ですね.生命を宿す唯一の星”地球”の宇宙の中における孤独感を表す部分は,郷愁を誘うメロディーを甘く切ない音色で歌い上げ,胸を熱くさせます.ラストは広大な宇宙を思わせるスケールの大きなコラールの後,未だ解明されない宇宙の謎と神秘が混沌としながら壮大に曲を閉じます.超難曲であるこの曲ですが,ヨークシャーの超絶テクニックと厚く芳醇なサウンドによる圧巻の演奏のため,難しさを微塵も感じさせず,時間を忘れて聞き入ってしまいます.やはり,この曲はこのバンドで聴いてもらいたいですね.

 もう一つの目玉である,”ハリソンの夢”ですが,こちらは一転,非常に熱い情熱的な演奏です.曲の前後に登場する時計の動きとハリソンの工房を表したテクニカルでアップテンポの部分は私がこれまでに聴いた演奏では最速の速さであり,前に攻めて来るような演奏ですが,それでも音楽が破綻しないところはさすがですね.海難事故の死者へのレクイエムである中間部のスローパートが絶品です.ヨークシャーは弱奏部の歌い上げがいつも印象的ですね.各楽器の音色が甘く,完璧にコントロールされたピアニシモによる切ないメロディーが胸を絞めつけます.後半のテクニカルパートの後に曲を盛り上げてから,最後にもう一度レクイエムに戻りますが,ここの盛り上げ方が熱い.少々オーバーフロー気味ではありますが,返って一気に感情がこみ上げる感じで,感動的です.

 その他のカップリング曲も圧巻の演奏で,プログラム,演奏共に非の打ち所の無い,ヨークシャー渾身の一枚です.

 ブラスファンだけで聴いていてはもったいない,クラシック音楽ファンのすべてに聴いて頂きたい名盤です.

【このCDの聴きどころ】
・ヨークシャーによる”宇宙の音楽”,”ハリソンの夢”という豪華プログラム
・テクニックとサウンドを堪能できる”宇宙の音楽”
・熱く,そして切ない”ハリソンの夢”


スパーク:宇宙の音楽,グレーアム:ハリソンの夢
演奏:ヨークシャー・ビルディング・ソサイエティ・バンド


宇宙の音楽/Music Of The Spheres
posted by ぶちねこ at 23:25| Comment(3) | TrackBack(0) | 吹奏楽のお奨めCD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月18日

雄大なアルプスへの讃歌〜秋山和慶/大阪市音のチェザリーニ”アルプスの詩”

【楽曲紹介】
 チェザリーニの”アルプスの詩”は,”アルプス交響曲”を作曲したR.シュトラウスの没後50年を記念して作曲されたものであり,R.シュトラウスのオリジナルに似た要素を持ってはいますが,描こうとしているものは全く異なります.R.シュトラウスが山の一日を模したのに対し,チェザリーニが最後の第7曲を”神の国”と名づけているように,”雄大なアルプスへの讃歌”としてこの曲が書かれたことが伺えます.

【このCDの購入理由】
 ”アルプスの詩”は本家の”アルプス交響曲”に負けず劣らずのホルンの目立つ曲です.ホルン吹きである私は,是非,ホルンセクションがしっかりしている楽団の演奏が聴きたいと思っていました.大阪市音楽団はホルンセクションが非常に安定しており,ライブの演奏会の評判も良かったことから,このCDを購入しました.

【CDレビュー】
 秋山和慶/大阪市音楽団のこのアルバムは,”雄大なアルプスへの讃歌”というイメージを最も感じさせる演奏となっています.

 まず,曲全体を通じて現れる息の長いフレーズは正にコラール,”歌”であり,教会のコーラス隊の歌を聴いているかのようです

 特に”讃歌”といての印象を深める役割をになっているのが,第7曲”神の国”で旋律の合間を縫って現れる,金管楽器のタタン,タタタンというファンファーレで.曲の進行とともに輝かしさを増して行き,歌い上げる讃歌に神々しさを添えています.

 そして最後は雄大なアルプスを讃えながら,アルペンホルンのテーマとともに圧倒的なスケールで曲を閉じます.

 この演奏を聴き終えた後は,何ともいえない幸福感が残ります.ライブ録音のため,演奏後にカーテンコールが入っていますが,その長さからも会場の聴衆も同じように幸福感を味わっていると想像できます.(これほどカーテンコールが長く入っているCDも珍しい

 なお,5曲目の”高原の牧場”におけるホルンのカデンツァが大変素晴らしいことも追記しておきます.

 その他,カップリングの曲も非常に集中力が高く,全曲楽しめる点でも素晴らしいアルバムです.

【このCDの聴きどころ!】
チェザリーニ:アルプスの詩
・コーラス隊の歌を聴くような息の長い旋律
・7曲目の旋律の合間に入る輝かしいファンファーレ
・雄大なアルプスを讃える圧倒的なスケールのフィナーレ



アルプスの詩/Poema Alpestre/大阪市音楽団

posted by ぶちねこ at 22:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 吹奏楽のお奨めCD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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