2005年08月29日

宇宙スケールのテクニックとサウンド〜ヨークシャー・ビルディング・ソサイエティ・バンドの「宇宙の音楽」

【アーティスト紹介】
 ヨークシャー・ビルディング・ソサイエティ・バンド(以下,ヨークシャー)と言えば,ブリティッシュ・スタイルのブラスバンドで,ヨーロッパのコンテストでグランプリを数多く受賞している超有名なスーパーバンドです.ヨーロピアン・ブラスバンド選手権では前人未到の6年連続優勝を成し遂げています.

【このCDの購入理由】
 タイトル・トラックのスパーク作曲”宇宙の音楽”は,ヨークシャーが2004年のヨーロピアンバンド選手権で6年連続優勝を決めた際に自由曲として演奏し,会場を興奮に包み込んだ話題の曲です.この演奏はセッション録音になります.また,このCDには,最近,吹奏楽業界でも話題のグレーアムの名曲”ハリソンの夢”がカップリングとして収録されています.この話題の2曲をヨークシャーの演奏で聴けるというだけでも,絶対に買いだと思いました.

【CDレビュー】
 ”宇宙の音楽”は宇宙の誕生から成長,地球,未知なる宇宙の神秘を描いた大作です.冒頭の神秘的なテナーホルンのソロが非常に印象的です.その後の宇宙の成長を表すスピード感のある部分での一糸乱れね統一感はこのバンドの真骨頂ですね.生命を宿す唯一の星”地球”の宇宙の中における孤独感を表す部分は,郷愁を誘うメロディーを甘く切ない音色で歌い上げ,胸を熱くさせます.ラストは広大な宇宙を思わせるスケールの大きなコラールの後,未だ解明されない宇宙の謎と神秘が混沌としながら壮大に曲を閉じます.超難曲であるこの曲ですが,ヨークシャーの超絶テクニックと厚く芳醇なサウンドによる圧巻の演奏のため,難しさを微塵も感じさせず,時間を忘れて聞き入ってしまいます.やはり,この曲はこのバンドで聴いてもらいたいですね.

 もう一つの目玉である,”ハリソンの夢”ですが,こちらは一転,非常に熱い情熱的な演奏です.曲の前後に登場する時計の動きとハリソンの工房を表したテクニカルでアップテンポの部分は私がこれまでに聴いた演奏では最速の速さであり,前に攻めて来るような演奏ですが,それでも音楽が破綻しないところはさすがですね.海難事故の死者へのレクイエムである中間部のスローパートが絶品です.ヨークシャーは弱奏部の歌い上げがいつも印象的ですね.各楽器の音色が甘く,完璧にコントロールされたピアニシモによる切ないメロディーが胸を絞めつけます.後半のテクニカルパートの後に曲を盛り上げてから,最後にもう一度レクイエムに戻りますが,ここの盛り上げ方が熱い.少々オーバーフロー気味ではありますが,返って一気に感情がこみ上げる感じで,感動的です.

 その他のカップリング曲も圧巻の演奏で,プログラム,演奏共に非の打ち所の無い,ヨークシャー渾身の一枚です.

 ブラスファンだけで聴いていてはもったいない,クラシック音楽ファンのすべてに聴いて頂きたい名盤です.

【このCDの聴きどころ】
・ヨークシャーによる”宇宙の音楽”,”ハリソンの夢”という豪華プログラム
・テクニックとサウンドを堪能できる”宇宙の音楽”
・熱く,そして切ない”ハリソンの夢”


スパーク:宇宙の音楽,グレーアム:ハリソンの夢
演奏:ヨークシャー・ビルディング・ソサイエティ・バンド


宇宙の音楽/Music Of The Spheres


posted by ぶちねこ at 23:25| Comment(3) | TrackBack(0) | 吹奏楽のお奨めCD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月24日

キラキラ輝くカルミナ・ブラーナ〜ラトル/ベルリンのカルミナ・ブラーナ

【このCDの購入理由】
 NHKで放映されたジルベスターコンサートの様子を視聴したのがきっかけですが,カルミナ・ブラーナへのラトルのアプローチと,ベルリンの金管群のブリリアントなサウンドは十分興味をそそられる要素ですね.

【CDレビュー】
 オルフのカルミナ・ブラーナと言えば,大編成のオーケストラに独唱,児童合唱,混声合唱を加えた大曲です.曲の内容はどちらかというと重たい内容ですが,ラトルはこの曲をベルリン・フィルのジルベスター(大晦日)コンサートに採り上げ,ジルベスターというお祭りにふさわしく,実にキラキラと輝かしい演奏に仕上げています.このCDはそのライブ録音です.

 カルミナ・ブラーナは大曲であるが故に,重く,ベタッとした演奏や,ゴチャ混ぜでよく分からない演奏になりがちですが,ラトルのアプローチはキビキビとしていて切れ味のいい演奏です.

 この切れ味のいい曲作りのため音の分離が良く,各セクションの音がはっきり聞こえる透明度の高さが特徴です.そのため,ブラスセクションはより輝かしく,弦楽セクションは艶やかに,合唱は華やかに聴こえます.

 また,合唱とオーケストラが均等に聴こえるため,曲の透明度を上げています.

 オーケストラ,独唱,合唱のすべての要素が互いを邪魔せずに,自己主張しながら作り上げるクライマックスはオールスター選手の競演の如く,豪華絢爛なクライマックスです.派手な演奏が好きな方には打ってつけの演奏でしょう.

 この透明度の高い演奏,録音には少なからず,ホールのフィルハーモニーの音響が影響しているであろうことを付け加えておきます.

【このCDの聴きどころ!】
・ラトルのキビキビとして切れ味の良い曲作り
・各セクションの音切れの良さとキラキラとした輝かしい響き
・豪華絢爛なクライマックス


B0006M18VMオルフ:カルミナ・ブラーナ
ラトル(サイモン) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 オルフ

東芝EMI 2005-01-19
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2005年08月18日

雄大なアルプスへの讃歌〜秋山和慶/大阪市音のチェザリーニ”アルプスの詩”

【楽曲紹介】
 チェザリーニの”アルプスの詩”は,”アルプス交響曲”を作曲したR.シュトラウスの没後50年を記念して作曲されたものであり,R.シュトラウスのオリジナルに似た要素を持ってはいますが,描こうとしているものは全く異なります.R.シュトラウスが山の一日を模したのに対し,チェザリーニが最後の第7曲を”神の国”と名づけているように,”雄大なアルプスへの讃歌”としてこの曲が書かれたことが伺えます.

【このCDの購入理由】
 ”アルプスの詩”は本家の”アルプス交響曲”に負けず劣らずのホルンの目立つ曲です.ホルン吹きである私は,是非,ホルンセクションがしっかりしている楽団の演奏が聴きたいと思っていました.大阪市音楽団はホルンセクションが非常に安定しており,ライブの演奏会の評判も良かったことから,このCDを購入しました.

【CDレビュー】
 秋山和慶/大阪市音楽団のこのアルバムは,”雄大なアルプスへの讃歌”というイメージを最も感じさせる演奏となっています.

 まず,曲全体を通じて現れる息の長いフレーズは正にコラール,”歌”であり,教会のコーラス隊の歌を聴いているかのようです

 特に”讃歌”といての印象を深める役割をになっているのが,第7曲”神の国”で旋律の合間を縫って現れる,金管楽器のタタン,タタタンというファンファーレで.曲の進行とともに輝かしさを増して行き,歌い上げる讃歌に神々しさを添えています.

 そして最後は雄大なアルプスを讃えながら,アルペンホルンのテーマとともに圧倒的なスケールで曲を閉じます.

 この演奏を聴き終えた後は,何ともいえない幸福感が残ります.ライブ録音のため,演奏後にカーテンコールが入っていますが,その長さからも会場の聴衆も同じように幸福感を味わっていると想像できます.(これほどカーテンコールが長く入っているCDも珍しい

 なお,5曲目の”高原の牧場”におけるホルンのカデンツァが大変素晴らしいことも追記しておきます.

 その他,カップリングの曲も非常に集中力が高く,全曲楽しめる点でも素晴らしいアルバムです.

【このCDの聴きどころ!】
チェザリーニ:アルプスの詩
・コーラス隊の歌を聴くような息の長い旋律
・7曲目の旋律の合間に入る輝かしいファンファーレ
・雄大なアルプスを讃える圧倒的なスケールのフィナーレ



アルプスの詩/Poema Alpestre/大阪市音楽団

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2005年08月14日

”間”の支配者〜ヴァント/ベルリンのブルックナー交響曲第8番

【このCDの購入理由】
 ブルックナーの最高傑作である交響曲第8番は私の最も好きな曲の一つです.その曲をブルックナーの第一人者であるヴァントと世界最高のオーケスト,ベルリン・フィルで聴けるとあって,発売日を心待ちにして入手した記憶があります.

【CDレビュー】
 私が初めて聴いたブルックナーの交響曲第8番のCDは,ギュンター・ヴァント指揮による北ドイツ放送交響楽団(以降,NDR)の93年の録音でした.当時,このCDを聴いて,圧倒的なスケールの大きな演奏に感動しました.その後も様々なアーティストでこの曲を聴きましたが,ヴァント/NDRを超える感動は得られませんでした.

 恐らく,これを超える演奏はないだろうと思っていたところに出てきたのが,ヴァント指揮のベルリン・フィルによる演奏でした.

 最高のブルックナー指揮者,ヴァントと,最高のオーケストラ,ベルリンフィルの共演に胸をを躍らせて聴きましたが,予想をはるかに超える感動を与えてくれました.

 まず,特筆すべきは,ベルリン・フィルのシャープな演奏です.非常にキレのいい演奏が曲を引き締め,全体に厳しいまでの緊張感を与えています.特に弦楽セクションが秀逸で,極めてクリアーな音色です.この音色を聴いて,「ベルリンの弦ってこんなにキレイだったの?」と思ったほどです.これは,やはり,ヴァントという名指揮者でなくては引き出すことのできない,ベルリン・フィルの極限の能力でしょう.ヴァントは完璧主義者で,緻密で徹底したリハーサルを行うことで有名です.その緻密さで,普通ならば見落としてしまうようなベルリン・フィルの僅かな”贅肉”をそぎ落としていった結果,このようなシャープな演奏が可能になったのではないでしょうか.

 ヴァントのブルックナーの8番へのアプローチは93年のNDRの録音で,すでに完成の域に達していたと感じられます.事実,このベルリン・フィルとNDRとの録音を聴き比べても,曲の進行ははほぼ同じです.しかし,両者は”間”の取り方が決定的に異なります.ベルリン・フィルとの録音は,フレーズの区切りや休止から次のフレーズの入るまでのタメが絶妙です.それはまるで,木の葉に雨粒がたまって,最後にしずくとなって流れ落ちる時のようなイメージで,自然な流れではあるが非常にタメが長く,息苦しさすら感じます.この絶妙な”間”のコントロールは,ヴァントの緻密な要求に完璧に追従できるほどの高い能力を持ったオーケストラが無くては成り立ちません.つまり,ベルリン・フィルという最高のオーケストラあってこそなのです.

 「最も感動したCDは何ですか?」と聴かれたら,間違いなく,このヴァント/ベルリン・フィルのブルックナーの8番と答えます.ブルックナー,ヴァントのファンならずとも,クラシック音楽ファン必聴の一枚でしょう.

【このCDの聴きどころ!】
 ・弦楽セクションのシャープでクリアな響き
 ・4楽章の各フレーズ,フレーズ間の絶妙な”間”


B00005ONV4ブルックナー:交響曲第8番
ヴァント(ギュンター) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 ブルックナー

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 余談ですが,近々,ヴァント/ベルリン・フィルのブルックナー交響曲選集が発売されます.単品購入より値段が張りますが,特典DVDがつきますので,この際,ヴァントとベルリン・フィルによるブルックナーの演奏を一気に集めたいという方にはお勧めです.
B0009S8ERYブルックナー:交響曲選集1996-2001
ヴァント(ギュンター) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 ブルックナー

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2005年08月07日

吹奏楽のCDはコレクター心理をくすぐる

 コレクションが増えるという喜びとはべつに,珍しいものを手に入れるという喜びもある.これがコレクターの心理というものでしょう.

 さて,私は吹奏楽団に所属している関係上,よく吹奏楽のCDを聴きますが,吹奏楽のCDって,あまり出回っていないんですよね.最近でこそ,国内のバンドのCDリリースが増えたり,輸入盤を取り扱うショップが増えたりしてきて,流通がよくなってきましたが,管弦楽のCDに比べると,その数の差は雲泥の差です.

 また,吹奏楽のCDは絶対数が少ない上に,流行り廃りの激しいジャンルですので,お目当ての楽曲のCDが世の中に存在するかどうかすら怪しく,かりに,CDが存在していても,そのCDを探し出すのがまた,難しい.

 吹奏楽でお目当ての楽曲のCDを見つけることはもう宝探しに等しく,コレクター心理をくすぐらずにはいられない.だから,お目当ての楽曲のCDを手に入れた時の喜びはひとしおである.

 ただし,ものが少ないだけに,複数の異なる演奏の中から良いものを選択することできないことが多々あります.つまり,一点ものです.レビューを読んだり,試聴したりして,事前にチェックできればいいですが,そうでない場合はもう購入して聴いてみるしかなく,バクチ性の高いジャンルでもあると言えます.
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2005年08月05日

”聴き比べ”という醍醐味

 歌謡曲の場合,一つの楽曲に対し,演奏するアーティストは唯一であるのが普通だけど,クラシックの場合,一つの楽曲を様々なアーティストが演奏する.

 同じ曲なのに,指揮者,オーケストラが変わると全く違った印象の曲になるから面白い.また,同じ曲を同じ指揮者が振っても,若い時と晩年とでは,これまた違った印象の演奏となる.

 このような,演奏の違いを楽しもうと思っても,実際のコンサートを聴いて回るのには限界がある.ここで,CDという録音の存在が注目されます.

 CDが手元にあれば,様々なアーティスト,年代の演奏を聞き比べることが可能になります.若い頃のカラヤンと晩年のカラヤンを聴き比べたり,ベルリン・フィルとウィーン・フィルを聴き比べるといったことも容易に楽しめます.

 オーケストラある国の国民性の違いや,指揮者の成熟の過程なんかに想いを巡らせながら,CDを聴けば,楽しみが格段に広がります!

 つまり,クラシック音楽のCDを聴く場合,2枚目,3枚目と違うアーティスト,年代のCDが増えれば増えるほど,その分,楽しみが増えていくことになるんです.

 これこそが,クラシック音楽をCDで聴くことの楽しみの醍醐味なのです.一点買いで満足してしまっては,もったいないですよ!
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2005年08月01日

音楽CDの3大要素

 音楽CDを構成している要素が3つあると考えます.それは,CDのディスク,ジャケットのデザイン,ライナーノート,です.

 CDのディスクは言うまでも無く,これがメインであり,ここに収めた音楽が聴くことが最大の目的です.

 次にジャケットのデザイン.演奏家の写真だったり,曲を連想させる写真や絵であることが多いようです.中身の音楽には直接関係はありませんが,「これから,この曲,この演奏を聴くぞ!」と,聴き手の気持ちの準備をさせてくれます.また,CDをコレクションアイテムと見たときに,高級感のあるデザインや個性のあるデザインは,そのCDを所有することへの満足感を与えてくれます.廉価版のCDなどは,ジャケットで手を抜いているので,曲と無関係な写真や絵であることが多く,味気ないデザインで高級感も個性もありません.

 最後にライナーノート.演奏家や曲の解説だけでなく,所謂,音楽評論家のコメントが書かれています.なくても困らないですが,曲の背景や演奏家のプロフィール,演奏の聴かせどころをインプットするかどうかで,当然,音楽を聴く楽しみ方が違います.廉価版のCDにはライナーノートが極端に省略されているか,付いていません.

 このように,CDは中身のディスクだけあればいいというものではなく,ジャケットとライナーノートを含めた3大要素が揃ってこそ,その楽しみを最大限に引き出せるのです.廉価版CDや私的利用のコピーでは楽しみが半減しますので,正規レーベルの上記3大要素の揃ったものの購入を断然,お勧めします.
posted by ぶちねこ at 22:46| Comment(0) | TrackBack(1) | CDの楽しみ方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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